このキョーダイ、じつはワケありでして。
『気張っていくんだ慶音ちゃん!!ここでテツこと哲明っ、慶音ちゃんの輝かしい勝利を願って───』
『いってきまーす』
『やだもう反抗期ぃ…!?』
ほんと、ありがとうテツ。
危ない奴らとの関わりを切ったとしても、おまえだけは切れなかった理由は。
暗闇に落とされた俺たち兄妹には、おまえの明るさが必要だったからだよ。
『ねえ、あの子じゃない…?両親が事故に遭った四宮さんって…』
『お気の毒よねえ…。娘さんだけが生き残ったらしいのよ。いまは歳の離れたお兄さんと暮らしてるって噂だけれど…』
『あらそうなの…。若いのに苦労するわね』
グラウンドを飾る国旗、周りを囲む大勢の保護者。
ジャージ姿に紅白帽を被った小学生たち。
オープニングダンスに応援合戦、妹の小学校最後の運動会は白組だった。
『お兄さんも大変ねえ…』
『引き取ってくれるご家族は居なかったのかしら…?せめて娘さんだけでも、ねえ…。可哀想に』