このキョーダイ、じつはワケありでして。
こういうときは決まって甘えん坊な妹をテキトーに抱きかかえながら階段を降りて、テツと作戦会議していた特別メニュー。
朝から豪華すぎる海鮮丼を出して、俺はお弁当の続きに向かえば。
テツ特性のへったくそなタコさんウインナーが待っていると。
『けーと、そろそろ咲良ちゃん来るけど忘れ物へーき?』
『あとハグ!』
『そうだった。───よし来い』
両手を広げると向かってくる、すっぽり隠れてしまう頼りないサイズ。
俺がちゃらんぽらんだったとき、この温かさに驚いたっけ。
『兄ちゃんは今日も慶音の家族だよ。ちなみにかけっこは1位取れなくてもいいからね』
『なんで…?』
『自分のチカラを思う存分出しきることがいちばんってこと。順位なんかぶっちゃけどーでもいい』
『わかった!』
1位だから勝ち、6位だから負け。
そんな考え方は俺たちを苦しめるものでしかない。
親がいるから普通、親がいないから可哀想。
そんなものとまったく一緒だ。
相手に勝つこと以上に凄いことは、自分に勝つことなのだから。