このキョーダイ、じつはワケありでして。




『だから俺たちのこと、可哀想ってのは間違ってるんじゃないですかね』



可哀想ってなんだ。

たしかに悲しいことはたくさんあるよ。
普通より苦労することばかりだ。


でもさ、それを可哀想って周りが見るから俺たちは可哀想になるんだろ。


オープニングダンスをあんな必死に踊って、元気に歌を歌って、フレーフレーって手を挙げて。

それってあんたらの子供と何ひとつ変わらないじゃん。


同じことをしているし、同じことができている。



『テツ。動画どう?いい感じに撮れた?』



しばらくすれば噂話は消えて、隣でずっと涙ぐんでいた親友に声をかける。



『いつか…っ、いつかぜってえこの動画を未来の慶音ちゃんに見せてやるんだ俺……っ』


『ふっ。…なんだよそれ』



俺はもしかすると間違えた選択をしているのかもしれない。

世間一般から見れば、こんなちゃらんぽらんに生きていた男が幼い妹を引き取るだなんてと、厳しい目を向けられるのが普通なのかもしれない。



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