このキョーダイ、じつはワケありでして。




『いい?成海くん。料理にとっての必需品は片栗粉よ、片栗粉!!』


『片栗粉……って、小麦粉とは別物なんでしたっけ?』


『ぜんっぜんちがうわ!!あれはもう魔法の粉ね。揚げても良し焼いても良し!振りかけるだけで柔らかくなって、とろみまで付いちゃうんだもの!』


『なっるほど。心得ておきます』



咲良ちゃんのお母さんは、俺の母さんとも仲が良かった。

慶音とふたりきりになってから最初の頃は毎日のように残り物を譲ってくれて、なにかあれば慶音の送り迎えまで。


大人しい咲良ちゃんとは種類のちがう、元気ある笑顔の絶えないお母さんだ。



『あのねおばさん。にいちゃんのポテトサラダ、すごく美味しいんだよ』


『え~そうなの!おばさんも食べていいかしら~!』


『うん』



お弁当を広げた瞬間、今日でいちばんの笑顔を見せてくれた。

機嫌がいい。
かなり楽しんでいる。


ここまで自分から言葉を出すことは、普段であれば珍しいことこの上ない。



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