このキョーダイ、じつはワケありでして。




『ふははっ、あのひと可哀想~!』


『来年はオレたち失敗しないようにしよーぜ』



なんでだよ……、なあ神様。

あいつが何したっていうんだ。
なんで笑われなくちゃならない。


可哀想?失敗?


なにが………失敗だよ。



『なるみ、くん…』



俺は、動けなかった。

すぐに駆けつける教師たちを遠目に見ているだけで、どうしたらいいか分からなかった。


慶音が落ちた瞬間、視界が真っ暗になった。


それは母さんと父さんが死んだときのことを思い出したから。

警察と病院の両方から電話がかかってきて、駆けつけたときにはもう顔には白い布が被せられていた。



“顔は……見ないほうがいいよ”



救命隊員の人にそう言われたっけ。

遺体自体はなんとか形を取り持ったものの、顔は土や石に潰されている───と。


でも俺だけはこの現実から逃げちゃならないと、布に触れたんだ。


喧嘩慣れしている自分であれば大丈夫だって、過信していた。



“かあ…さん…っ、とうさん…っ、ああああああ!!!!”



それは想像を絶する、ひどい有り様だった。



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