このキョーダイ、じつはワケありでして。




『土砂、崩れ…さあ』


『え…?』


『ちょうど落ちてきた岩と車の隙間に挟まって、岩が土を食い止めたことで助かったらしいんだ…あいつ』



そんな奇跡あると思う?
俺はそれ聞いたとき、単純に思ったよ。

ああ慰めるために美化してくれたのか、って。


たまたまだよ。
慶音が助かったのは、たまたま。



『成海くん…』


『俺いつも不安なんだよ…、いろいろ、怖いんだよ』



格好つけて引き取ったくせに、後悔もしている。

泣きぐずる妹を前にすると、同じように泣きたくなる。



『っ…、慶音もいつか俺を残して死ぬんじゃないかって……怖いんだよいっつも』



いつかあいつも顔に布が被せられて、俺はまた同じように剥がすんじゃないかって。

そしたら俺は無理だ。
もう耐えられる自信がない。


両親の死に際に耐えられたのは、妹だけは助かったという事実がせめてあったからだ。


そんなあいつすら居なくなった世界なんかもう────…意味がない。



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