このキョーダイ、じつはワケありでして。




未練があるから俺は今、ここにいる。


おまえとまだキョーダイしたいっていう、未練。

この妹だけを置いてはいけないっていう、未練。



『わたし…死なない。にいちゃんよりあとに死ぬ』


『…うん、そーして。でもそれ前に兄貴離れはしてよ?ずっと兄ちゃん兄ちゃん言って100歳になっても独身とか笑えないから』


『え、離れないよ?ずっと一緒にいるんだよ?なに言ってんだよにいちゃん』


『……まあいっか。でもいつか彼氏ができたら3発は殴らせてもらうけど』



今はまだいいか。

いや、とりあえずもうしばらくは。



『かれし?あっ、でもクラスの子ね、いるんだってカレシ』


『…はあ?12歳の分際で?』


『うん。なんか言ってた。わたしもできる?』


『できない要らない必要ない。まだ20年はいらないんだよそんなの』



とっくに妹離れできなくなっているのは俺のほうなんじゃないかって、いつの間にか恐怖や不安はそんな呑気なものに変わっていた。


慶音。

俺はこのときと何も変わってないよ。



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