このキョーダイ、じつはワケありでして。
いつかの未来…。
私のせいで潰して壊してしまったと思っていた兄の未来は、まだあるのだと。
「いいかげん今を生きろって、慶音」
過去と未来ばかり追いかけていた。
過去には罪悪感を置いて、未来には寂しさを作って。
「今の俺の幸せは、ふたりで過ごす忙しい毎日を……おまえの兄貴として笑って生きること」
それが四宮 成海の、“今の”、幸せ───。
今ある、今しかない兄の幸せは、無理やり手に入れるものじゃなかった。
無理やり形にはめ込むようなものじゃなかった。
ゆっくり、確実に、着々と、ふたりだからこその幸せを積み重ねてきていたんだ、私と兄ちゃんは。
「その今って時間が、いずれおまえが俺の前に唯一の男を連れてくるような未来に繋がるだろーし。…そいつとそこでくらいは酒を飲んで、俺はやっと泣くんだよ。
悔しさと嬉しさと、なんか達成感みたいなもので。兄ちゃんが欲しい未来って……たぶん言語化するならこれだよ」
理解した瞬間、声をあげて泣いた。
あったかすぎて幸せすぎたから。