このキョーダイ、じつはワケありでして。




「ここまで言わないとそれが分かんない時点でまだまだクソガキなんだから。足りない脳でわざわざ難しいこと考えたって意味ないだろ、バカ妹」


「うん、ごめん、にいちゃんごめん…っ」


「食べて寝て勉強して、笑って迷って悩んで泣いて。ガキンチョらしく自分のことに必死になって。そうやって過ごしてればいいんだよ」



私ですらそこまで見たことがない兄の笑顔には、年相応な青年らしさが初めて見えた。

たぶん兄は、そんな私を見て過ごす毎日を誰よりも楽しんでいるのかもしれない。



「それにしても。まったくひどいくらい適当なことばっか刷り込んでくれたね」



そしてずっと忘れていた存在───麻衣子さんへと振り返った低い声。

彼女も肩を震わせては表情を引きつらせたものの、すぐに苦笑い。



「こいつわりと単純思考で洗脳されやすいんだから、やめてくれよそーいうの」


「わ、私はそういうつもりじゃなくて…」


「じゃあどういうつもり?あんたが俺たちの家に邪魔しにきてから、こいつずっと俺が嫌いな顔で笑うんだけど」



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