このキョーダイ、じつはワケありでして。




先輩と天瀬の小さく吹き出したような音が聞こえた。


まあでも人のタイプにとやかく言うつもりはない。

兄が好きになった人だ。
どんな人だとしても素敵に決まっている。



「お姉さん……、あっ、いつも私たちが通ると頭下げてくれる…?」


「そ。いつだっけ、その人が初めて俺たちに声かけてくれたのって」



スーパーで買ったアイスを帰り道に食べる。

私と兄の夏の日課だった。


その日もアイスを食べながらクリーニング屋の前、ちょっとだけ変わったことがあったような。



「───あった!高校に上がる前くらいだよ、いつも見るからって割引券くれたの」


「そうそう」



花壇の水やりをしていたエプロン姿のお姉さん。

たまたま目が合ってしまった私が足を止めて、続くように兄ちゃんも。



『いつも仲良さそうにしてるところ、お店から母と一緒に目にしていたんです。仲がいい兄妹で微笑ましいねって』



とくべつ目立つ身なりや顔立ちをしているわけではないけれど、笑顔が素敵で、穏やかでおっとりしている感じの兄よりは年上。



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