やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
「いえ、ただ、すごくびっくりしていて……」
清掃員として働く酒井さんがコバルトユニオンの会長だなんて事実は、社長をはじめとする一部の重役しか知らないことだろう。
働いている目的から察すれば一般社員に知られてはならないから、社内でしか話さない私にも正体を明かせなかったのは当然のことだ。孫が社長だと口にできなかったのもわかる。
「それじゃ私は昼食の準備をしてくるわね。ふたりで話をしていて頂戴。隆文、しっかり瑠伽ちゃんの心をつかむのよ」
酒井さんは楽し気に言い置いて去っていき、場がしんと静まった。
社長の耳が赤くなっていて、それ以上に私の顔が真っ赤になっているのを感じる。気まずくてうつむきながら、「でも」とつぶやいた。
「マクレガーとの縁談があるんですよね……?」
「パーティで、俺が言ったことを覚えているだろう。祖母は俺にとっても、社にとっても、最良の相手を見つけると。マクレガーの令嬢は祖母のお眼鏡にかなっていない。令嬢は人心掌握が苦手だから、企業名を取れば魅力がないんだ」
パーティでの態度からも人柄がわかると、彼はスパッと切り落とした。