やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
突然廊下のほうから響いた声に私の体がびくっと跳ねた。入り口のふすまがスラッと開かれて、緊張はピークに達する。
「まあ、遅かったじゃないの」
「すみません。道が混んでいたもので」
謝罪の言葉を落としながらも悪びれることなく、堂々とした居住まいで酒井さんの隣に座ったその人は、私を見て柔らかく微笑んだ。
「……社長」
「祖母の生誕祭に来てくれてありがとう」
「いえ、とんでもないです……およびいただけて、光栄です」
動揺して受け答えも精いっぱいで、まともに前を向くことができない。酒井さんは彼の母方の祖母で……。
ああ……やっぱり……どうしよう……。どういうこと?
今起こっていることに対し、理解が追い付かない。
「どう? 瑠伽ちゃん、話してたようにイイ男でしょ?」
またまたバチンとウインクをする酒井さんは、相当な策士だと思う。
なにも言えずに苦笑を返すしかない。
「今回あなたを招待したのはね、縁談として孫と会わせたかったからなのよ。でも瑠伽ちゃんはガードが堅いからねぇ。お見合いにすると来てくれないと思って、こんなふうにさせてもらったの。騙した感じになってしまって、ごめんなさいねぇ」