やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
背中に冷や汗がたらりと流れるのを感じながら口を開くが、どうにも焦ってしまって空気ばかりが出る。
「なんのことかわかりませんが……勘違いではないでしょうか。ひょっとして夢を見たとか……?」
あわあわしながらやっとのことで出た声は、自分でも情けないくらいにおどおどしていた。
「ふむ。ならば、昨夜の俺はきみの幻を相手にしたのか? なかったことにしようと思っているなら、無理だ」
魂胆がバレバレなうえに、ずばっと断言されてぐうの音も出ない。
二代目にして国内シェアを急拡大させ、海外進出まで果たしたやり手の社長相手にしらを切るなんて無理だったのだ。
勝ち目のない戦に挑もうとした私が浅はかだったようだ。
「今朝のことを含め、これまでの言動の理由を正直に話せ」
私を見つめる目と問いかける声は柔らかいけれど、言葉の端に怒りの気が乗せられている。
相当怒っているのだ。
これでは仕事の忙しさを理由にして逃げたくても、彼は許してくれそうにない。慌てて言葉を探した。