やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


「あ、朝は……その、ことの経緯をまったく覚えていなかったので、動揺しまして、つい逃げました……それで、社長とのことが周囲にバレたら辞職に追い込まれると感じまして、なかったことにしようと考えました」

「ほう、なるほど。まったく覚えていないというのか。俺との会話も行為も?」

「はい。すみません……。昨夜の出来事は、おそらくお酒の影響を受けた気の迷いかと。社長もそうかと思いますし。ですから、忘れていただけると大変ありがたいのですが」

 おずおずとお願いする私の手を、社長はずっと握ったままだ。

「会話も行為も、お互いの気の迷いと言うのか」

「はい。ですから、どうか記憶から抹消してください」

 私を見つめ続ける彼の目がふと沈んだように見えた……のもつかの間、普段通りの強い視線が私を捉える。

「それは、困る。あきらめろ。昨夜から今にかけて、きみは、俺にかなりの衝撃を何度も与えてるんだ。これでは、とうてい忘れることはできない」

「えっ」

 今はとにかく、昨夜の衝撃とは……? 私、いったいなにをしたの?

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