バレンタイン

思えば無謀なXmas


 赤と緑と金色が街に氾濫している。

 雪が散らついているというのに、外はなんだか寒いとは感じない。

 これって、行き交う人々の幸せな熱気が気温を上昇させているのではないだろうか?

 ...なんて、莫迦なことを考えながら、私は窓の外を行き過ぎる笑顔の人々を見送った。


 今日はクリスマスイヴ。

 煌びやかさもピークもピークの大絶頂。

 そんななか私はひとり、カフェで雑誌をめくっていた。


 イヴをともに過ごす彼もいない。

 それどころか、21歳の現在までイヴに甘いひとときを過ごしたことなんてないし。

 その上、一緒にクリスマスを祝う家族も今年は遠い異国の地。

 大学の友達たちも、今夜は私と遊んでる暇なんかないんだって。


 
 ひとりでケーキをつつくのも寂しいので、なんとなく真っ直ぐ家には帰りたくなくて、大学の傍の行きつけのカフェに来てみたけれど.....止めれば良かった。

 ここもカップルで埋め尽くされている。


 なによお、この国には独りもんっていない訳?

 そんな卑屈な気持ちになりながらも、それでも未だ熱々のアールグレイには未練があって、席を立たずに雑誌をめくり続けていた。


 まあ、この雑誌もシアワセな友達からお下がりになった『カップルでsweetに過ごしたいXmasおススメスポット特集』なんてちょっと恥ずかしくも、今の私には侘しいものなんだけど。

 なものだから真剣に読むわけでもなく、ただパラパラと頁を繰っていた私の指が止まった。









< 7 / 21 >

この作品をシェア

pagetop