【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「じゃあせめて写真一緒に撮ってもらって良いですか? お兄さんすごくカッコイイんだもん」

 なおも食い下がる女の子に、迅の目は更に鋭くなる。

「うざってぇなぁ……失せろ」

「ひっ!」

 完全に怯えさせてしまっているのを見て、あたしは慌てて迅に駆け寄った。
 このままだと他の子も睨みつけそうだし、何より迅の機嫌がさらに悪くなる。

「ごめん、お待たせ」

 遅いって怒られるかな? と思っていたんだけれど、あたしを見た迅は鋭くしていた目を和らげた。

「リィナ、必要なものは買えたか?」
「あ、う、うん」

 思いがけない優しい言葉に戸惑いと嬉しさが湧く。

 迅はそのまま女の子たちを無視してあたしの手を取った。

「え?」
「次行くぞ」

 そのまま手を引いて歩き出す。

 突然繋がれた手に、目を白黒させたあたしはどうすればいいのか分からなかった。

 手、つなぐの? と突っ込めばいいのか、このまま何も言わずされるがままでいればいいのか。
 
 考えて、きっと突っ込んでしまえば離されてしまうと思ったあたしは……どうしてか何も言わずにこのままでいることを選んだ。

 手から伝わる迅の体温に、胸が熱くなって大変なことになってるっていうのに……。


 あたし、本当にどうしちゃったんだろう?
< 26 / 56 >

この作品をシェア

pagetop