【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
5.甘い日々と不安
 それからというもの、学校では。

「リィナ、俺の女に手を出すやつは学校にはいねぇだろうけど、なんかあったらちゃんと呼べよ?」
「分かってるよ。ありがとう」

 過保護になった迅に教室まで送り迎えをされる毎日。

 お礼も込めて勇気を出して頬にキスをすると、迅は「可愛い」と臆面もなく口にして唇へキスを落とす。


 寮では。

「お前に料理させたら綺麗な指に傷がつくかもしれないからな」

 なんて言ってはあたしの手を取って指にキスを落とす。

「でも作って貰ってばかりで悪いよ」
「良いんだよ、その代わりお礼はしっかり貰ってるからな?」

 ニヤリと少し悪い笑みを浮かべる迅は、そのまま唇へと濃厚なキスをする。


 優しくて甘い綿菓子のような日々は、あたしを女の子にしてくれた。

 高校デビューしよう! と、はじめに思い描いていたものとは違ったけれど、とても幸せな日々。

 大好きな迅に女の子扱いされて、守られて、嬉しい。


 ……でも、だからこそ不安だった。


 本当はケンカが強いって知られたらどうしようって。

 迅に守って貰わなくても、本当はその辺の男たちくらいひねり潰せるって。


 知られたら可愛いって言ってもらえなくなるのかな?
 それだけならまだしも、嫌われたりしないかな?

 それが怖くて、言えないでいた。
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