【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
 そのまま肩を抱くように拘束されたから抜け出すために動こうとしたんだけれど……。

「大人しくしとけよ? じゃねぇとそこのチビがもっと酷ぇ目にあうぜ?」

「っ!」

 あたしを捕まえるために圭を人質に取るつもり⁉

 せめて圭が自力で動いて逃げれるなら何とかなるけれど……。

「圭⁉」
「う、うぅ……」

 呼びかけるけれどうめき声が聞こえるだけだった。

「あーあ、ほとんど気を失ってるんじゃねぇっすか? 三谷さん容赦ねぇから」
「ほーんと。でも蹴られたのほとんど胴体だから良かったんじゃねぇ? 可愛い顔は無事なんだしよぉ」

 ギャハハと下品に笑う男達はそのまま圭を抱え上げた。

「さてと、リィナっつったか? スマホ出してロック外せ」
「や――」
「さっきも言ったけどな、そいつをこれ以上痛めつけられたくなけりゃあ大人しく言う事聞いといた方がいいぜ?」

 嫌だという拒否の言葉を口にする前に脅される。

 圭は男達の手の内。
 どうとでも出来る状態。

 あたしが逃げ出すのは簡単だけれど、助ける前に彼らは圭を痛めつけるだろう。

 ……言う通りにするしかなかった。


 自分のスマホを取り出してロックを外すとすぐに奪われる。
 勝手に操作して電話を掛けている様だった。
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