【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「三谷さん、あいつ来たっすよ」

 倉庫の入り口を気にしていた三谷の仲間が知らせてくる。

 あたしと三谷は同時にそっちに視線を向けた。


「あ……」

 迅……。

 今まで見たことが無いくらいの怒りを全身にまとわせて、彼は倉庫の中に入って来る。

 彼の姿を見た途端、あたしは怒りを一瞬忘れて嬉しいと思ってしまった。
 危ないのに、助けに来てくれたことがとても嬉しい。

 助けなんてなくても、圭が意識を取り戻せば何とか自力で逃げ出せる。

 それでも、迅が来てくれたことに胸が熱くなるほどの喜びを覚えていた。


 迅の前だと、やっぱり女の子でいたいと思ってしまう。

 迅に守られて、甘やかされる可愛い女の子に。


「リィナ、無事か?」
「う、うん。あたしは大丈夫」

 真っ先にあたしの心配をしてくれる迅に泣きたくなってきた。

 今の状況は、あたしよりも迅の方が悪いのに。


「……三谷、リィナと圭を解放しろ」

「はっ! 言われてすぐ開放するわけがねぇだろ?」

 ピリッと、空気が張り詰める。

 一触即発の雰囲気。
 でも三谷は余裕の笑みを浮かべる。

「分かってるよな? お前が反撃すればこの女もケガをすることになるぜ?」

「くっ」

 迅は三谷を睨みながらも、怒りを押し留めたみたいだった。

 そんな彼に男が一人近付く。
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