【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
　ニヤニヤと笑って「反撃するんじゃねぇぞ？」と拳を作っていた。


「そらよっと！」

「っぐ！」

　男の拳が迅の腹に入る。
　痛みに顔を歪めたけれど、迅は男や三谷を睨むのを止めなかった。

「そのクソ生意気な目が絶望に変わるのが見てぇんだよ。お前ら、もっと痛めつけてやれ」

　あたしを拘束した三谷が他の仲間に指示を出す。

　ニタニタと楽しそうに迅に近付いていく一人が「そうだ」といいことを思いついたとばかりに声を上げた。

「他のチームの連中にも知らせたらどうっすか？　《氷龍》の総長を痛めつけれるって聞いたら喜んでくる奴は多いと思いますよ？」
「ああ、それも良いな。連絡先知ってるやつらに知らせてやれよ」

　凶悪な提案に三谷は楽しそうに許可を出す。

　本当に、性根が腐り切ってる。


「さぁて、いいサンドバッグになってくれよ？」
「ぐぅっ！」

　提案した男がいくつか電話をかけている間にも、他の男達によって迅は一方的に痛めつけられていた。

「やっ、迅！」
「だい、じょうぶだ」

　迅はやられながらも急所は避けるようにしているのか、決定打は受けていない。

　だから大丈夫だなんて言っているみたいだけれど、痛くないわけじゃないはずだ。
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