乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
第12話・はぐれそうな天使

【うぬぼれワルツ】

時は、1月12日の朝7時半頃であった。

ところ変わって、波止浜の母子保健施設にて…

ゆりこは、ウェンビンさんとミンジュンさんに連れられて施設《ここ》に戻ってきた。

ゆりこが使っている部屋にて…

下着姿にさらされていたゆりこは、ベージュのサテンパジャマ姿に着替えられたあとふとんの中で眠っていた。

ウェンビンさんとミンジュンさんは、ものすごく心配な表情でゆりこを見つめながらつぶやいた。

ゆりこさんの身に、一体なにがあったのか…

そんな時であった。

ヨリイさんがものすごくつらい表情で部屋に入った。

ウェンビンさんは、ヨリイさんに声をかけた。

「施設長。」
「ゆりこちゃんを助けていただいてありがとうございます…あなたたちは、よーくんと一緒にお仕事をしているメンバーさまですね。」
「はじめまして…瀧野《たきの》ともうします。」
「富永でございます。」
「いつもよーくんを助けてくださってありがとうございます…これからも、よーくんをよろしく頼みます。」
「はっ…」

ウェンビンさんとミンジュンさんは、ヨリイさんとあいさつをかわした。

ゆりこは、まだ深い眠りについていた。

ヨリイさんは、ゆりこを親もとへ帰した方がトクサクではないかと思った。

しかし、今の状態ではゆりこを安心して帰すことはできなかった。

鹿之助友代《しかのすけともよ》夫婦は、竜也《たつや》から暴力を受けたことが原因で鬼原《おにわら》の豪邸《いえ》から出た。

次に逃げ込んだ場所も安全上の問題があった。

そのために、ゆりこを親もとへ帰すことは不可能であった。

またところ変わって、玉川町別所《たまがわちょうべっしょ》の鴨部《かんべ》団地の中にある一戸建ての和風建築の家にて…

家は、友代《ともよ》の姉・三角郁恵《みょうかいくえ》輝史《てるふみ》夫婦の家族が暮らしている家である。

家の家族は、郁恵《いくえ》輝史《てるふみ》夫婦と長男・拓司《たくじ》(43歳・ケーリ)と長女・大南房江《おおみなみふさえ》(48歳・クソナマイキ出戻り)と房江《ふさえ》の子ども・兼定《かねさだ》(中2)と奈江(5歳)が暮らしていた。

その上に、鹿之助友代《しかのすけともよ》夫婦とまりよと日奈子が暮らしていた。

鹿之助友代《しかのすけともよ》夫婦とまりよと日奈子は、竜也《たつや》の暴力が原因でここへ逃げ込んだ。

4人は、本州《よそ》へ出た4人の息子たちが使っていた個室で間借りの暮らしをしていた。

時は、夜7時頃であった。

場所は、家の大広間にて…

食卓には、郁恵輝史《いくえてるふみ》夫婦と房江《ふさえ》と兼定《かねさだ》と鹿之助友代《しかのすけともよ》夫婦とまりよがいた。

拓司《たくじ》は、まだ帰宅していなかった…

日奈子も、家を出たあとどこかへ行ったようだ…

テーブルの上には、まりよが作った料理が並んでいた。

房江《ふさえ》は柱についている電波時計を見たあと、あつかましい声で奈江に言うた。

「奈江!!7時半になったらおかーさんと一緒にお勉強をします!!」

房江《ふさえ》からあつかましい声で言われた奈江は『イヤ!!』と言うた。

房江《ふさえ》は、あつかましい声で奈江に言うた。

「いけません!!奈江は最初に受けた名門幼稚園の試験に落ちたのよ!!その時におかーさんとヤクソクしたことを思い出しなさい!!」

たまりかねた郁恵《いくえ》は、困った声で房江《ふさえ》に意見を言うた。

「房江《ふさえ》!!奈江ちゃんに無理な強要するのはやめた方がいいわよ!!」

郁恵《いくえ》から意見を言われた房江《ふさえ》は、ものすごく怒った声でハンロンした。

「なんでうちが決めた教育方針《ほうしん》にけちつけるのよ!!」
「けちつけてないわよ~」
「あのね!!奈江はアイダイフゾクショウガッコウに合格させたいから必死になっているのよ!!」
「だけどね…」
「おかーさん!!うちは奈江がしあわせな人生をおくることができるようにと思って必死になっているのよ!!兼定《かねさだ》は、名門幼稚園とアイダイフゾクとアイコーの試験に落ちたのよ!!」
「だからどうしたいのよ!?」
「おかーさん!!うちは奈江がアイダイフゾク(小学校)に合格することしか頭にないのよ!!兼定《かねさだ》は、フツーの小学校・中学校に行ったからダメになったのよ!!」
「オドレはぐいたらしいんだよ!!」

(ガツーン!!)

この時、房江《ふさえ》の横に座っていた兼定《かねさだ》がグーで房江《ふさえ》の右腕を殴りつけた。

殴られた房江《ふさえ》は、兼定《かねさだ》のこめかみをグーで殴りつけた。

「あまったれるな!!」
「だまれ教育ママ!!」

このあと、房江《ふさえ》と兼定《かねさだ》はひどい大ゲンカを起こした。

時は、夜10時半頃であった。

家の前に、いずみ観光のタクシーが止まった。

タクシーの中から、スーツ姿の拓司《たくじ》が黒の手提げカバンを持って降りた。

その後、拓司《たくじ》はつかれた表情で家に入った。

ところ変わって、家の台所にて…

拓司《たくじ》は、冷蔵庫の中から取り出したアサヒスーパードライの500ミリリットル缶のフタをあけて一気にごくごくとのみほした。

そんな時であった。

台所にやって来た郁恵《いくえ》がつらい表情で拓司《たくじ》に声をかけた。

「拓司《たくじ》…」
「なんぞぉ〜」
「遅かったわねぇ…」

郁恵《いくえ》からあつかましい声で言われた拓司《たくじ》は、怒った声で言うた。

「またそれいよる!!」
「拓司《たくじ》…」
「オレはより道して遅くなったんじゃないんだよ!!」
「分かってるわよ…だけどね…」
「『心細い』と言いたいのかよ!!」
「おかーさんは心細いのよ!!」
「オレが松山の三浦工業《ほんしゃ》に転勤になったことがそんなにいかんのか!?」
「だって、以前勤務していた船舶事業部《せんぱく》から急に本社へ転勤したから…」
「はぐいたらしいんだよ!!」

ブチ切れた拓司《たくじ》は、郁恵《いくえ》に空き缶を投げつけたあとよりし烈な怒りを込めて言うた。

「転勤をことわったらクビになるから本社にしたがっただけや!!そんなに三浦工業《みうら》がいかんのだったら、今年度でやめるぞ!!」

郁恵《いくえ》は、ものすごく泣きそうな声で『なんでせっかく入った三浦工業《みうら》をやめるのよ!!』と言うた。

拓司《たくじ》は、ものすごく怒った声で郁恵《いくえ》に言うた。

「せっかく入った三浦工業《かいしゃ》に就職したけん、オレの人生はわやになったんや!!ふざけるな!!」

(ガーン!!)

ブチ切れた拓司《たくじ》は、右足でテーブルをけとばしたしたあと台所から出て行った。

郁恵《いくえ》は、その場に座り込んだあとぐすんぐすんと泣いた。

拓司《たくじ》の遠距離通勤問題…

房江《ふさえ》のお受験問題…

そして、兼定《かねさだ》の中学卒業後の問題など…

家庭内で生じた深刻な問題を解決できる方法は、どこにもなかった。

これから先、どうして行くつもりなのか?
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