乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

【ブルー】

それからまた時は流れて…

5月7日のことであった。

2月15日から5月6日までの間、イワマツグループの全メンバーたちは世界各地と沖縄で1日も休まずに班ごとの活動を続けていた。

この期間中、日本《ほんど》には行かなかった。

5月7日以降にイワマツグループのメンバーたちが日本《ほんど》に行く予定は未定である。

話は変わって、日本時間の朝7時40分頃であった。

場所は、玉川町の鴨部《かんべ》団地内にある郁恵《いくえ》夫婦の家族たちが暮らしている家にて…

家の大広間の食卓に、家族10人が座っていた。

テーブルの上には、まりよが作った朝ごはんが並んでいた。

この最近、房江《ふさえ》が極度にイライラカリカリするようになった。

奈江《なえ》がアイダイフゾク(小学校)に合格できるようにしたい…

房江《ふさえ》の頭の中は、お受験に受かることしかなかった…

房江《ふさえ》ひとりのせいで、家族関係は極度に悪化した。

そんな中であった。

郁恵《いくえ》は、ものすごくつらい声で拓司《たくじ》に言うた。

「拓司《たくじ》。」
「(怒った声で)なんぞぉ〜」
「なんで三浦工業《みうら》をやめて違う事業所《ばしょ》に転職したのよ〜」

郁恵《いくえ》は、拓司《たくじ》が三浦工業《みうら》をやめてよその事業所《しょくば》へ転職したことに強い不満をつのらせていた。

なんで三浦工業《みうら》をやめたのか…

せっかく三浦工業《みうら》に入ったのに、なんでもったいないことしたのよ…

郁恵《いくえ》は、気に入らないことがあるたびに拓司《たくじ》に対して『なんで三浦工業《みうら》をやめたのか…』と問い詰めまくった。

郁恵《いくえ》に問い詰められた拓司《たくじ》は、ものすごく怒った声で郁恵《いくえ》を怒鳴りつけた。

「ふざけるな!!オドレが三浦工業《みうら》三浦工業《みうら》三浦工業《みうら》…と繰り返していよるけん頭に来るんだよ!!」

郁恵《いくえ》は、泣きそうな声で拓司《たくじ》に言うた。

「朝から怒鳴り声をあげないでよ…おかーさんはしんどいのよ…」
「だまれ!!オドレが三浦工業《みうら》三浦工業《みうら》三浦工業《みうら》…と繰り返していよるけど、オレにどうせえ言うねん!?」
「おかーさんは、なんで三浦工業《みうら》をやめてよその事業所《しょくば》に転職したのかと聞いているだけなのよ!!」
「はぐいたらしいわね!!」

(ガーン!!)

ブチ切れた房江《ふさえ》は、つけものが入っている小鉢を輝史《てるふみ》に投げつけた。

小鉢は、輝史《てるふみ》のひたいに直撃した。

郁恵《いくえ》は、悲痛な声で房江《ふさえ》に言うた。

「房江《ふさえ》!!なんでおとーさんに暴力をふるうのよ!?」
「拓司《たくじ》が三浦工業《みうら》をやめた原因を作ったからよ!!」

端で聞いていた鹿之助は、困った声で言うた。

「房江《ふさえ》さん、なんでおとーさんに八つ当たりするのかな…おとーさんにどんな落ち度があるのかな?」
「鳥居家《よそもん》は口出しするな!!」

ブチ切れた房江《ふさえ》は、鹿之助の前に置かれている食器類に瓶詰めのらくれん牛乳を投げつけた。

(ガチャーン!!)

鹿之助の前に置かれていた食器類が粉々に壊れたと同時に、瓶の中身が周りに飛び散った。

ブチ切れた房江《ふさえ》は、よりし烈な怒りを込めて言うた。

「拓司《たくじ》が三浦工業《みうら》をやめた原因は、おとーさんが全部悪いのよ!!」

友代《ともよ》は、泣きそうな声で房江《ふさえ》に言うた。

「だから、おとーさまにどんな落ち度があると言うのよ~」

房江《ふさえ》は、よりし烈な怒りを込めて言うた。

「おとーさんがお向かいの家のご主人を利用したのよ!!」

鹿之助は、困った声で言うた。

「お向かいの家の息子さんが三浦工業《みうら》に勤務しているんだよ…お向かいの息子さんと同じ職場《ばしょ》だったら拓司《たくじ》さんが安心して働けると思ったから…」

(ガーン!!)

ブチ切れた房江《ふさえ》は、近くにあった物で輝史《てるふみ》の頭を殴りつけた。

「あああああああああ!!」

頭を殴られた輝史《てるふみ》は、叫び声をあげた。

その後、ブチ切れた拓司《たくじ》がワーッと叫びながら輝史《てるふみ》に殴りかかった。

「オドレクソアホンダラ!!」
「やめてくれ〜」
「表へ出ろ!!」

このあと、拓司《たくじ》はよりし烈な叫び声をあげながら輝史《てるふみ》をボコボコにどつき回した。

「やめてくれ〜」
「オドレのせいだ!!オレは三浦工業《みうら》で働きたくなかったんだよ!!」
「悪かった〜…わしが悪かった〜」

拓司《たくじ》は、お向かいの家の息子さんもボコボコにどつき回した。

「拓司《たくじ》さんごめんなさい…ぼくが全部悪かった〜」

お向かいの家の息子さんの泣き叫ぶ声がキンリンに響き渡った…

そして…

(ガシャーン!!)

拓司《たくじ》は、お向かいの家でめちゃめちゃに暴れ回った。

拓司《たくじ》の叫び声と激しく物が壊れる音がキンリンに響き渡った。

さらにその上に…

「オドレ三角《みょうか》!!」
「クソアホンダラ!!」

(ガシャーン!!ガシャーン!!)

郁恵《いくえ》夫婦の家族が暮らしている家の窓ガラスに石が投げられた。

投石したのは、近くを通りかかった私立高校生《ヨタコウのダンシセイト》ふたりであった。

ブチ切れた兼定《かねさだ》は、金属バットを持って私立高校生《ヨタコウセイ》の頭を殴りつけた。

殴りつけられた私立高校生《ヨタコウセイ》が意識を失って倒れた。

兼定《かねさだ》は、もうひとりの私立高校生《ヨタコウセイ》と大乱闘を繰り広げた。

地区は、きわめて危険な状態におちいった。

時は、午前11時半頃であった。

またところ変わって、松山市梅本町《まつやましうめのもとちょう》にある国立四国がんセンターにて…

この日、3ヶ月前に受けた宮出さんのがん検診の結果が出た。

宮出さんは、次男夫婦と一緒にここ(がんセンター)にやって来た。

カンファレンスルームには、次男夫婦と担当の医師がいた。

宮出さんは、カンファレンスルームの入口にあるイスに座っていた。

カンファレンスルームに、重苦しい空気がただよっていた。

担当の医師は、よりけわしい声で次男夫婦に検診の結果を伝えた。

「検査の結果が出たので、お知らせいたします…おとーさまは…食道がんにリカンしていました…ステージ3に相当する症状です。」
「ステージ3…」
「そんな…」

担当の医師は、宮出さんの体内を撮影したレントゲンフィルムを電光ボードにセットした。

担当の医師は、宮出さんの次男夫婦にくわしく説明した。

担当の医師は、新しい元号《げんごう》に変わる来年(2019年)5月頃まで生きることはむずかしい…と言うた。

宮出さんは、あと数ヶ月…長くても10ヶ月(2019年の3月まで)しか生きることができない…

宮出さんは、イワマツのメンバーたちと再合流することができなくなった。

宮出さんは『もうええねん…わしは十分生きた…』と言うて治療を拒否すると訣意《けつい》した。

カンファレンスルームの入口にあるイスに座っている宮出さんは、残された時間の過ごし方を考え始めた。
< 119 / 200 >

この作品をシェア

pagetop