帆をあげろ!!

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帆をあげろ!!
オデット:はぁっ、はぁっ…(逃げている)
オデット:よし…やっとまけたかしら…?んん?
オデット:…あれは…人魚…?まさかね…。あたし、きっと疲れてるんだわ…
アルナ:…スケテ…助けて…
オデット:えっ…どうしたの?人間の言葉通じる?
アルナ:水…水を…かけて…
オデット:水?はい(かける)
アルナ:ふう…ありがとう。なんか私、人を探していたら何処かから落っこちちゃって
オデット:何処かって…。じゃあ貴方、どこからきたのよ?
アルナ:どこでもないわ。だって私、永久に時空の中を泳ぐ人魚ですもの
オデット:時空!?海じゃないんだ?
アルナ:はい。海じゃないです。時空です。
オデット:なんかとんでもないことになりそうな気がするんだけど…で、誰を探しているの?
アルナ:えーっと、おかしいわね…?写真を持ってきたはずなんだけど…さっきの拍子に落っこちちゃったのかしら?
オデット:と、特徴なんかはわかる?どんな人?
アルナ:たしか…女の人で…そうだ、胸に薔薇のタトゥーをしていたような…
オデット:うーん…そんな人は知らないなあ…悪いけどあたし、海賊狩りから逃げてる途中なんだ。他をあたってくれない?
アルナ:でも貴方、この街の人なんでしょう?
オデット:そんなこと言ったってねえ、あたしあちこち逃げ回ってるから…かっこいい言い方をするなら旅人?
アルナ:へぇーっ…そんなのがあるんだ、人間の世界には
オデット:そうよ、だってあたし、追われているんだもの
アルナ:そう…。貴方、名前は?
オデット:オ、オデット…。
アルナ:私はアルナ。ねえ、追われているなら、私と一緒に時間の旅に出ない?
オデット:えっ!?でも、どうすれば…?
アルナ:今はそれしかないんじゃないかしら?簡単よ。わたしの鱗を一枚だけとって…?
オデット:こう?で?
アルナ:ねえオデット、紐かなにかは持ってないかしら?
オデット:ああ、ついさっき壊れたペンダントのチェーンならあるけど
アルナ:じゃあそれにこうして、こうして…。はい、こうしてこれを首にかけておけば貴方も時空の中を泳げるわ。
オデット:ほんとに?ま、たしかに綺麗だけどさ…え?わあっ!?
アルナ:さあ、行くわよ!!あまり陸にいるとまた水切れしちゃうしね!!
オデット:うん!!
(時空の中)
オデット:ねえアルナ、私たち結局どこに行くの?
アルナ:どこでもいいんだけど…
オデット:ところでなに?この空間は…。なんか扉がいっぱいあるけど
アルナ:多分、時空のなかよ。私にもわからないけど。好きな扉を開いて
オデット:どこでもいいんだ…じゃあ…
オデット:あ、あそこの扉が光ってる!!
アルナ:よし、いきましょう!!
(間)
オデット:ここは…何処…??
アルナ:さあ…??
オデット:あれ!?アルナ、足が生えてるよ!?
アルナ:あら本当ね。なるほど、私たちはその時の世界線にそった姿形になるわ。だからここは足がある世界線なのね。
ジョン:おいアン、メアリ。こんなところで何やってんだ、船に戻るぞ
オデット:えっ、あたしたちそんな名前じゃな…わあっ!?(船に引っ張られていく)
(船にて)
アン:遅いぞ、ジョン。何してたんだ
ジョン:何をって、お前…んん?
メアリ:とりあえず、そこの二人は何者なんだ?
ジョン:な、アンとメアリが二人ずつ!?
アルナ:私たちは旅の者です。私はアルナ、彼女はオデットといいます。
オデット:そうそう。なんか旅の途中に急にこの人に間違われて
メアリ:なるほどな。ま、たしかに似ているが
アン:あんたねえ、愛しの妻の事間違えたなんてっ!!
ジョン:ごめん、ごめんってば!!えーっと、俺はジョン。でこいつは俺の女のアン。で、アンの相棒のメアリ。
メアリ:しかし、どうするかな…。降りようとしても、もうここは既に海の上だ」
アン:…あんた達、旅の途中だって言ってたな。だったらいっその事次に降りるまで一緒にくるか?
メアリ:それしかないな
アン:すまないね、ウチのバカ亭主が…
ジョン:本っっ当にごめんな!!ところでお前たち、剣と銃は使えるか?
オデット:あたしは銃なら多少は使えます。アルナは?
アルナ:私も一応使えます。
ジョン:実は俺達は海賊でね、いろんな船を襲っているんだ。殺しはしないけどな
アン:だから、武器が使えないとやってけないわけ。じゃあ二人にも手伝ってもらおうか
アルナ・オデット:はい!!
ジョン:うーん、じゃああの商船を狙うか?
アン:それがいいな。
メアリ:そうだな。商船のほうが素人には簡単だろう。
アン:よし、じゃあいくぞ。メアリ、背中は任せた
メアリ:ああ
アン:オラオラ、積み荷をよこしな!!じゃないと鉛玉をぶち込むよ!!
メアリ:抵抗するなら切るぞ、降伏するならしやがれ。但し、この胸の薔薇のタトゥーを切ってからな
オデット:つ、強い…
アルナ:とっ…たあっ!!あっ…その胸の薔薇は…。まさか…
オデット:せいっ!!オラオラオラァ!!
アン:フン、素人にしてはなかなかやるじゃないか、あの子ら
メアリ:私たちも負けてられないな」
アルナ:来るなら来なさい、ぶっ飛ばしてやるわ!!
ジョン:お、おい…!!まずいぞ、海賊狩りだ!!
オデット:そっか…。この時代でも海賊狩りはあったんだ…。あたしが行きます!!
アルナ:いけない!!オデット!」
オデット:えっ…
(銃声)
アルナ・オデット:あああああっ!!(殺される)
(間)
オデット:ここは…何処??
アルナ:さあ…??でもまた別の世界に来たみたいね
オデット:アルナ、今度は足が無いのね。でもだとしたら…
オデット:あ!!あの人達は…!!
アルナ:アンとジョン…まさか
アルナ:どうやら、こちらの世界では私達の姿は相手には見えないようね
アン:ジョン、あんたが死んでしまうのは悲しいよ。でもあんたがあの時男らしく戦っていれば、犬っころみたいに吊るされずにすんだんだよ…
ジョン:…
アン:あたしは今、ここから出てどうするかはわからない。妊婦は殺されないからね…。けどあんたはあの時どうしたらよかったのかわかってたはずだよ
ジョン:…すまなかった。お前にも、お前のその子にも…。
オデット:そんな…。つまりジョンは…
アルナ:ええ、この後絞首刑になることになるわ。
オデット:そんなの、ありえない!!ジョン…どうして…
オデット:うっ…。でもどうしてわかるの?
アルナ:それは…
(間)
アン:メアリ…あんたが熱病になんてかからずに生きていれば…
アルナ:…
オデット:アルナ?
アルナ:あ、いいえ。なんでもないわ
アン:…ごめんね。
オデット:え?
アン:二人の分まで生きて頂戴…バイオレッタ…わたしの娘…
オデット:バイオ…レッタ…?
アルナ:思い出した…?あなたの本当の名前を…?
オデット:あたしが…アンとジョンの娘…?
アルナ:そうよ…あなたの本当の名前はバイオレッタ…これでわかったでしょう?あなたがどうして知らない人間に追われているのかが。それは、あなたが海賊の娘だからよ!!
バイオレッタ:そんな…うっ!?
(間)
メアリ:アン…あんたが処刑されずに生きていれば…
アルナ:…
バイオレッタ:アルナ?
アルナ:あ、いいえ。なんでもないわ…
メアリ:…ごめんね。
バイオレッタ:え?
メアリ:私、独りぼっちだわ…妊娠はしたけれど…もう私の娘は…
アルナ:…ママ…
バイオレッタ:?アルナ、なんか言った?
アルナ:い、いいえ…
バイオレッタ:じゃあ、なんで泣いてるの?
アルナ:えっ……?私…泣いてるの…?
バイオレッタ:…
(間)
アルナ:ごめんなさい。バイオレッタ…本当は、私はこの世に存在していないし存在できない。でもやっと会えた、わたしのママ…メアリ…。実はね、私は本来存在するべき魂ではないの。なぜなら本来の歴史のメアリは私がお腹の中にいる間に死んでしまったのだから…。だから時空の中を泳ぐ人魚として永遠の時をさまよっているの。でも、ママの親友だったアンの娘…バイオレッタが生きていると知って、さらに本人が両親の事を知らないとわかって教えてあげたくなった、『あなたの母親は私のママの相方だったのよ』と…。そして会ってみたかった。ママの相方さんってどんなひとだったんだろう…と。でもこれでわかったわ…。
バイオレッタ:そうだったの…。でもそんなこと言われても…いまさら帰ろうにも、もうあたしなんか両親ももういないしどこの世界にも必要とされてないし、居場所だってないじゃない!!海賊狩りから逃げるだけの毎日に戻るだけじゃないっ…!!どうしてくれたのよ!!
アルナ:でも…でも!!あなたもパパとママに会いたいと思ったことはないの!?
バイオレッタ:っ…!?
バイオレッタ:そんなこと…っ!!あたしは捨て子だったんだから…!!きっともともと要らない子だったのよ!!
アルナ:だとしても、ご両親がいる時点であなたは恵まれてるし、きっとどこかに居場所もあるはずよ!!
バイオレッタ:本当に?
アルナ:本当よ。大丈夫、ここから先に出たらここまでのあなたの記憶は消える。でもあなたには三人の優秀な一流海賊の血が流れているのだから…あなたは要らない子なんかじゃない。あなたにもいつかいるべき場所ができるわ…私は自分のいるべき世界にいるだけよ。さようなら。バイオレッタ…会えてよかった、ありがとう…
(間)
バイオレッタ:はぁっ、はぁっ…(逃げている)
バイオレッタ:よし…やっとまけたかしら…?んん?
アルナ:…
バイオレッタ:あれは…人魚…?まさかね…。あたし、きっと疲れてるんだわ…
(走り去る)
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