一期一会。−2−
「よかった」

そう言って、優しく笑う彩羽が、
愛しくて、哀しい。

辛いなら、少しくらい完璧を崩したって
いいだろうに。

彩羽は、弱いところを隠して、見せないようにしてしまう。

悔しくて、でも、涙を飲み込んで、
お粥を食べきった。

泣きたいのは、きっと、彩羽の方だから。

食べ終わった食器も、余すことなく彩羽が
洗って拭いてくれた。

家事もある程度してくれて、助かった。

…ほんと、何から何までこなすなぁ。

テキパキと動く様は、主婦さながら。

「よし、後は寝るだけだね。

 寝室まで歩けそう?」

熱のせいでフラついて、うまく歩けないことを思い出し何とも言えなかった。

微妙な顔をしていたら、彩羽は
「手伝うよ!」と張り切りだした。

…ねぇ、ちゃんとわかってる?

ただえさえ、二人っきりの空間で危ないのに、寝室まで付いていくなんて正気の沙汰じゃないからね?

男として意識されてないのでは…?
と傷つきつつも、『一人で行ける』と
云い返した。



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