一期一会。−2−
もし万が一にでも、彩羽をどうにかして
しまったら、それこそ色々な意味で人生が
終わる。

無理を承知で椅子から立ち上がると、
おぼつかない足取りで寝室へ向かう。

「葵っ、倒れたらどうするの!」

『平気、もう帰っていいよ、ありがと』

オロオロしながら付いてくる彩羽に少し
冷たく言った。

この子は少し、無自覚が過ぎる…。

一瞬、足が止まる気配がしたけど、
すぐに付いてきた。

「何で冷たくするの!理不尽だよ…」

そして、とうとう寝室の中へ。

俺は、近づいてくる彩羽に、はぁと
深く溜息を吐いた。

ダメだ、これ以上は限界かもしれない。

理不尽だって…?

鈍感な彩羽には、分からないか…。

…じゃあ、教えてあげるよ。

俺が今、どう思っているのか。













ー…理性が、音を立てて、壊れた。












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