あんなに好きだったのに。






駅のホームに立つと思い出すよ。

小春は一筋の涙を流して無理して笑った、あの時のこと。


俺は何も分かっていなかった。

小春の事を大事にできていなかった。

全部、自分本位だった。


今なら分かるのに。

分かった今、小春は隣にいない。







「は?なんて言った?」

「だから私たち、別れよう」



あの時の俺は最高に間の抜けた顔をしていたと思う。

小春と別れる?

そんなこと考えたこともなかった。



「いや、え?冗談だよな?」

「私と別れてください」



深々と頭を下げる小春を見ていると、自分がすごく惨めになった。



「俺、なんかした?」

「うんん…」


「じゃあなんで?」

「私のわがまま。ごめんね…」



小春はそう言って笑って見せ、電車に乗り込む。

何が起きたのか分からなかった俺は、その場で立ちすくむしかなかった。





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