貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「他にも色々持ってこようかと思ったんだけどね,元がその色なら問題ないよ。それもあげるからね」
私は促すように座らされて,アンナはほどけないようにと少し強めに結ってくれた。
編み込みにされて,仕上げにアンナの薬指が私の唇を滑る。
私の唇はそれを追うように赤く色づいた。
アンナがくれたのは,控えめに存在を主張する,赤の紅だった。
「アンナ……本当に良いの? こんな綺麗な色」
「また買えば良いからね。それに,それは私が若い頃に使ってた色だから,もう合わないさ」
「アンナ」
「なにさね」
「行ってきます」
私がそう言うと,アンナは快活な笑顔で
「いってらっしゃい」
と言ってくれた。
この屋敷じゃ,このやり取りすら見ることが出来ない。