貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「自分の苗字,知ってる?」

「珍しいから,危ないって」

 

ふわふわと聞かれるまま,答えてしまう。

危ないの意味も,今ではしっかり理解している。

蘭華が,いつの間にか私の横にいた。



「どっちの性も知ってるけど,聞きたい?」

「別に,いい。私はずっと凛々彩だったから。蘭華は? 蘭華はないの?」



苗字がないのは,基本的に,島の中央に1つだけ存在する大きな教会。

そこで育つような孤児だけだ。



「両親が僕の苗字でケンカして,なくなったんだよ。母の方だったら立花だったらしい」



父の方は長くて覚えてない。

蘭華は起き上がって,ベットの縁に座る。

立花 蘭華。

その可能性に,私は小さく微笑んだ。

私は片方の手を掴まれて,枕に頭を預けたまま蘭華を見上げる。

その刹那,蘭華と視線が交わった。

状況の理解が及ばないままその綺麗な青を見つめていると,掴まれた右手首にぐっと力が込めらる。

端正な顔が,私に影を作った。

ちゅ…と確かに唇が触れる。

私は目を見開いて,言葉を失った。

こんなことは,初めの日には起こらなかった。

私は,ポロポロと訳も分からず涙を流す。

それを見て,蘭華が目の端に,涙を吸うようなキスを落として。



「ごめんね,泣かないで」



私の前髪を撫でた。



「無理,みたい」



私の困った泣き顔が,蘭華の瞳に映っている。

蘭華は反対に,くすりと笑った。



「僕はね,嫌がる女の子を無理矢理ってのはあんまり好きじゃないんだよ」



だからその気にさせるのが得意なんでしょ?



「よく聞いて」



蘭華は言う。
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