干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 俊介は、一人休憩所のベンチに腰かけていた。

 雑に開けた缶の口から、コーヒーの雫が手元に散る。

 俊介は膝に手をつき前かがみの姿勢のままで、その雫をぼーっと眺めていた。


 ――また離れていくのを黙って見てるのか……? また一人になるのか……?


 俊介の目の前にはあの日の風景が広がっていた。

 見渡す限り緑の葉が揺れる景色の中で、優しい笑顔はいつまでも俊介を包みこむように見つめていた。


 その時ふと俊介の脳裏で、その笑顔と美琴の顔が一つに重なる。


「私は今日からあなたの味方です!」


 にんまりと笑う顔と一緒に差し出された手のひら。


 ――あぁ。そうだ……。あの時俺は、一筋の光の道を見つけた気がしたんだ。


 俊介はコーヒーを飲み干すと勢いよく立ち上がる。

 そして会場内へと駆け出していた。
< 159 / 435 >

この作品をシェア

pagetop