干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 受話器を置いた美琴は、しばらくそのままじっと電話を見つめていた。

 頭の中で雅也の笑顔がチラつく。


 ――そんな人だとは思えない……。思えないのに。


「友野さん、どうしました?」

 副社長の声が聞こえ、美琴ははっと振り返った。

「あ! えっと。壁面装飾の見積り、無事通過しました!」

 美琴のブイサインに室内が一気に明るくなり、みんなが手を叩いて喜んでいる。


 その騒ぎを聞きながら、美琴はぼんやりと床に目をやる。

「その他に、何かあったんですか?」

 副社長が美琴の様子に気がつきそっと側に寄った。


「たぶん……」

 美琴は顔を上げて副社長を見つめる。

「たぶん、うちの見積りのデータが、トータルに流れてます」

「は……?」

 肩を抱き合って喜んでいた東と滝山の動きがぴたりと止まる。


「そうですか……」

 副社長は腕を組み、静かに目を閉じた。
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