干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「友野さん!」

 副社長が慌てて、美琴の身体を支える。


「みなさん、一旦座りましょう」

 副社長はそう声をかけると、美琴を抱えたままソファに移動した。

 美琴はそのままソファに浅く腰をかけ、じっと足元の絨毯を見つめる。


 ――誰が?! 何で?!


 美琴は泣き叫びたい気持ちを、ぎゅっと心の中に押し込めていた。


「取り急ぎの対応としては、システム部に依頼して管理者権限で一斉メールを削除してもらう事です。幸い夜遅くの発信だったため、多くの社員はこのメールを目にしていません」

 副社長は美琴を責めるでもなく、静かな声で淡々と話をする。

 その姿がより事の重大さを身に沁みさせた。


「……どうして、わかったんですか?」

 美琴は恐る恐る顔を上げる。

「メンテ部から俺宛に電話が入ったんだ。残業してたメンバーがメールを開いてな」

 部長が額に手を当てながら、美琴を気づかうように声を出す。

「ということは……もう、メールを見てる人がいるってことですよね……?」

「まぁな。元々メンテ部ではトータルへの引き抜きが裏で噂になってた。それもあってすぐに知らせたようだ」

 部長はそう言うと、頭を下げて深いため息をついた。
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