干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「大丈夫ですよ。今までちゃんと準備してきたんですから」

 耳元で温もりのある低い声が聞こえ、美琴が顔を上げると、副社長がそっとほほ笑んでいた。

 美琴は急に跳ね上がる心臓と共に、真っ赤な顔でこくんと大きく頷く。


 パネルの設置も完了し、美琴が最後の雪の装飾をブナの木に飾っている所へ、イベント企画会社の担当者がやって来た。

 男性はプレゼンの際に、責任者として話をしていた人だ。


「いやー。本当に素晴らしい出来で、我々も正直驚いてます」

 男性は副社長に向かって声をかけた。

「ありがとうございます。こちらも弊社を選んで頂いたからには、期待以上のものを作れるようにと今日まで準備してきましたので、そう言って頂けて何よりです」

 男性は副社長の言葉にうんうんと頷きながら、思い出したように顔を上げる。

「イベントのデザインなどを取り上げている雑誌社が、御社の話を聞きたいと言ってまして、紹介だけさせてもらっても良いですか?」

「はい。ぜひ」

 副社長はそう答えると、美琴達に軽く手を上げて会場の奥の方へと入って行った。
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