干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「美琴ちゃんはね、俊介の事がどうしようもなく好きなんだって。そこまで言われたら諦めるしかないよね。でもね。美琴ちゃんには感謝してる。そのおかげで気がついたんだ」

 雅也は、一旦言葉を切った。

「俺は自分一人で、会社を変えようとしてた。でも違ったんだよね。これから父親を説得してくるよ。うちがグリーンデザインに、手を出していることは何となく知ってたんだ。それをやめさせる」

「そんな事できるのか? お前、父親の言うことは絶対だって昔から言ってたじゃないか」

 雅也のあははと笑う声が、耳元で聞こえる。

「よく覚えてるね。でも、それで後悔してたんだよ。俊介や健太と距離を置いたことも……。すっかり忘れてたのにね。全部、美琴ちゃんが思い出させてくれた」

「そうか……」

「俊介。美琴ちゃんの事、大切にしてあげてよね。俊介だから潔く身を引くんだからね!」

 雅也はおどける様に、明るい声を出した。


「うん。わかってる」

 そう答えながら俊介は、雅也の明るい声の裏の表情を感じ取っていた。
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