干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「ごめん。美琴の後ろ姿を見かけて、慌てて追いかけてきたんです」

 俊介は頬を赤らめながら、照れたように頭をかいた。

「もう……。すごく嬉しいです」

 久しぶりに間近で見る俊介の整った顔に、美琴も頬を赤らめる。


「温室に行くんですか?」

「はい。滝山くんが先に行って準備してるんで」

 二人は温室に向かう廊下を、ゆっくりと並んで歩いた。


「展示会の準備の方は順調ですか?」

「一応。結構色々な種類の木とか植物を使うので、その手配も大変で……」

「それは管理も大変そうですね」

「はい。なので早めに届いても置き場もないし、管理もできないので直前に届くようにしてるんです。その分、どんな木が来るか直前までわからない、ってのも不安ですけどね」

 美琴は苦笑いしながら俊介を見上げた。

 俊介は美琴を愛おしそうに見つめている。


「今日は珍しく夜の予定が入ってないんです。美琴の家まで送って行きます」

「えっ」

 美琴は、ドキッとして小さな声を出した。


「なんなら僕のマンションに、一緒に帰っても良いけど……」

 俊介は少し意地悪な顔をして、美琴の様子をチラッと伺っている。

「そ、そ、それはっ……」

 美琴が、顔を真っ赤にしてあり得ないほど動揺していると、俊介はぷっと笑った。

 まるで美琴の反応を見て、楽しんでいるような顔つきだ。
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