干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 はっはっはっと変わらず大きな笑い声を立てる様子に、俊介は一瞬ぴくりと眉間に皺を寄せた。

 その様子に気がついたのか、鷺沼社長が隣の由紀乃を振り返る。


「そういえば、映画の壁面装飾も素晴らしいものでしたな。実は壁面装飾が紹介された雑誌を娘が熱心に見てまして、今日こちらに来ると伝えたら『自分も絶対に連れていけ』とうるさくて……」

「お父様ったら」

 由紀乃はぱっと頬を真っ赤にして、隣の父親を恨めしそうに見た。


「一度お話を伺いたかったんです……雑誌で見た装飾が素敵だったもので……」

 由紀乃は小さな声でそう言うと、上目づかいに俊介の顔を見た。

「あぁ。それはありがとうございます」

 淡々と答える俊介の様子を見ながら、父がぽんと手を叩く。


「由紀乃さんもここでは退屈でしょう。我々はまだ仕事の話があるから、俊介は、由紀乃さんをご案内して差し上げなさい。こちらに出てくるのは久しぶりなんだそうだ。下に私の車を寄越すから、観光でもしてくるといい。どうでしょう?」

 父は目の前の二人に、にこやかにほほ笑む。
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