干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 電話を切る直前、雅也が「そうそう」と声を出す。

「俊介は元気にしてる?」

 その名前を聞いた途端、美琴はひどく動揺し言葉に詰まってしまった。

「美琴ちゃん?」

 雅也に名前を呼ばれ、美琴は慌てて我に返る。


「あ、ごめんなさい。元気ですよ……」

「そう。それは良かった」

「それじゃあ、また。ありがとうございました……」

 美琴は逃げるように通話終了のボタンをタップし、そのまま車に乗り込んだ。



 美琴との電話を切った後、雅也はこめかみに手を当てながらしばらく考え込む。


 ――あの噂は本当か……。


 そしてもう一度スマートフォンを開くと俊介の番号を表示させた。



 俊介は副社長室のデスクに肘をつき、額に手を当てたままぼんやりとパソコンの画面を眺めていた。

 結局、昨夜(ゆうべ)はここに座ったまま一睡もできなかった。

 遅れて部屋に戻って来た健太は、今はソファで寝息を立てている。

 最初から答えは出ていたのかも知れない。

 それでも少しだけ足掻(あが)いてみたかった。

 少しだけ、美琴との未来を手放す時間を遅らせたかった。


 ――もう、鷺沼に頼るしか方法はない……。


 俊介がそう心に決めた時、スマートフォンの呼び出し音が鳴った。
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