干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 美琴が部長と共に、緑化事業部に戻った時は既に夕方になっていた。

 昨日から泊まり込みで作業している面々は、ぐったりと疲れきった顔をしている。

 それでも美琴の姿を見つけると、みんなが駆け寄って来てくれた。


 相変わらず滝山は今にも泣きそうな顔だ。

「みんなに心配かけちゃって、ごめんなさい」

 美琴は小さく頭を下げる。

「そんな! 友野さんのおかげで植物が手に入ったんですから」

 美琴は、優しく声をかけてくれる胡桃を振り返った。


「あのね。ひとつだけわがままを聞いて欲しいの。胡桃ちゃんには特に迷惑をかけちゃうと思う……」

 美琴はそう言うと一人一人の顔を順に見る。

 そしてそっと手元のスマートフォンを取り出した。


「展示会のデザインを変えさせて欲しい。この渓谷を作りたいの」

 画面を覗き込んだ滝山が「あっ」と小さく声を出す。

「こ、ここって、友野さんが木をもらって来た渓谷ですよね?」

「うん、そう。とても大切な場所なの……」

 美琴は頷きながら顔を上げる。


「私はどんなに辛い事があっても、前を向いて胸を張って仕事をしたって、そう言いたい。私のわがまま聞いてくれるかな……」
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