干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「そうです! 担当課長が気さくで良い人なんですよー。そういえば、ここはお客様を迎える、エントランスがあったはずです」

「どんなエントランスですか?」

「小さな会社なので10㎡……6畳くらいかな。基本エントランスは、通り過ぎるだけなんですけど」


 美琴は、あまり印象に残っていない、MMコーポレーションのエントランスを思い浮かべていた。


「そういえば……」

「え?」

「花瓶だけ、置いてあった気がします」

「花瓶だけ?」

「はい。おっきな花瓶……いや、陶器製の壺なのかな?」

「ふーん……」


 副社長は腕を組み、しばらく考え込む様子を見せていたが、急に美琴を振り返った。

 間近で見る副社長の顔に、美琴はどきっとして反射的に背中を反らせる。


「ど、どうしましたか……?」

 美琴は、どもりながら聞く。

「それでいきましょう」

「へ?」

 副社長はにっこり笑うと、ハンバーガーの最後の一かけらを、口に放り込んだ。
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