干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

突然のどきどき

「へぇ。副社長さんなの?」

 MMコーポレーションの笹野(ささの)課長が、目を丸くしながら副社長と美琴の顔を見比べている。


「今日は、新規事業のご案内に伺いました」

 副社長は、抜群の営業スマイルを課長に見せる。


「あの、笹野課長。こちらのエントランスって、花瓶が置いてあるだけじゃないですか。お花とか、飾らないんですか?」

 美琴はそれとなく、エントランスの花瓶の話を課長に振る。


「あー美琴ちゃんだから、言っちゃうけどさ。花ってコストも手間もかかるでしょ? うちのエントランスなんて通り過ぎるだけだし、花とかなくても、花瓶だけでインテリアになるかなって話でね」

「そうなんですねぇ」

 美琴は、課長に曖昧に相槌(あいづち)をうちながら、そっと副社長と目を合わせた。


「それ! うちのグリーンで、装飾させてもらえませんか?」

 美琴は身を乗り出して、課長に詰め寄った。
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