干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「相馬部長は、専務派なんだよ。この泥船プロジェクトの転覆(てんぷく)を待ってる人達……どうすんの?」

 東が副社長を振り返り、滝山も身を乗り出して見つめている。

 副社長はデスクの椅子に座り、顔の前でじっと手を組んだまま動かない。


「私は……」

 しばらくして美琴が声を出した。

「私は、部長が敵には思えないんです……。続けましょう。副社長!」

 美琴は扉から目線を外し、副社長に顔を向ける。


「でも美琴ちゃん。専務がああ言ったってのは、たぶん事実だよ」

「そうですけど……」

 東の言葉に美琴はうつむく。


 副社長はしばらく静かに目を閉じていたが、急にくくっと声を出して笑い出した。

「え? 副社長?」

 三人は、首を傾げながら顔を見合わせる。

「もちろん続けますよ。それにしても……」

 副社長は美琴に目を向けた。

「え……?」


「部長が少し(うらや)ましいな……」

 美琴には、副社長の最後の言葉は聞き取れなかった。
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