遠距離恋愛は人をダメにする。
その夜は…焼き肉を食べ、自宅に戻る。

やはり、年頃の男の子だ。

お兄ちゃんと優くんは、これでもかって感じで肉を食べまくっていた。

現役高校生の筋肉質のお兄ちゃんでさえ、お腹がポコッて膨らんでいた。

そして、自宅に戻り、リビングで飲み物を飲みながら話をする。

大人たちと私はお茶、お兄ちゃんと優くんは炭酸飲料。

昔話で盛り上がる。

そして、お兄ちゃんがあることを言う。

「そういえば、志帆ちゃんは?」

そうだ。忘れてた。
いやいや、忘れてても仕方がない。

優くんと年の離れたお姉さん。
確か、私たちが保育園の頃はもう高校生だった。
保育園児から見たら、高校生はもう大人の女性だ。
それに優くんの家に遊びに行ってもほとんど顔を合わせない。
なぜなら、平日は夕飯頃には私は帰ってしまって、志帆さんが帰ってくるのはその後だからほとんど顔を見ない。
休日でも志帆さんは家にほとんど居なかった。

今のお兄ちゃんと同じだ。

そういうお兄ちゃんだって、小学生の4、5年生だ。そんなに覚えていないはずなのに。

「あ、志帆ちゃん。今…」
ママがそう言おうとすると

「あの子、もう結婚したのよ」

「ええええっ」
いちばん驚いたのは、やはりうちの両親だった。

「あ、去年ね。去年の6月に…」

「で、今は?」

「町田にいるわ」

「ああ、町田ね」

東京都町田市。
一応、東京都だが、ほぼ神奈川県のような東京都。
街はにぎやかで、自称、ほぼ渋谷。

「ま、近くていいじゃない」
百草園の日野市からだと、車で1時間かからないぐらい。

「そうかぁ、あの志帆ちゃんが結婚ね」
パパがしみじみ言う。

「今、あの子、小学校の先生やってるのよ」

「へぇ、そんなんだ」
結婚していた事にも驚き、学校の先生をやっているのも驚いた私の両親。

「じゃあ、最近はあまり会ってないの?」

「そうね。あれね。日野から近いからいつでも帰られると思って、帰ってこないわね」

「ああ、なるほど」
妙に納得した私のパパ。

近い故にってやつみたいだ。

「でも、あの子、優のことが好きだから、よく誘われるわ。ねっ、優」

「あ、うん」

「つい最近も遊びに行ったよね。町田に」

「1人で行くの?」
私のママが優くんに聞く。

「は、はい。電車とか乗り継いで」

「へぇ、凄いね」

「多摩センターか永山まで行けば、すぐだから」

「確かに」

「この子、意外に町田好きなんだよね」

「あ、まぁ」

「志帆はブラコンなのよ」
優くんのお母さんはさりげなく言う。

それに対して、私のママが言う。
「ま、年の離れた弟だし、優くん格好いいから」

「でも、確かに町田は渋谷や新宿みたいにゴミゴミしてないし、歩きやすいんじゃない?お店もいっぱいあるし」

「そ、そうですね」
優くんは私のパパに返事する。

あ、私は何となく察知した。
きっと、優くんは桃香ちゃんとも町田に行ってると。

聖蹟だと誰に会うかわからないし、町田なら知ってる子に会うことないし。

志帆さんは桃香ちゃんと会ったことあるのかなぁ。

あとから聞いてみよう。
ふふっ。

「さ、そろそろ」
パパが腰を上げる。


今夜は、これから西アピタの横のスーパー銭湯に行く予定だ。
パパは全員を送るため2往復する。
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