あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

 里菜は日記を読むと号泣してしまった。
 こんなにも愛されて産まれてきて、亡くなるまでずっと自分の幸せを祈っていた実のお母さん。
 愛していると書いてあったのを見ると、こんなにも愛されて産まれて来たのだと思えた。
 そして命を懸けて産んでくれた事に胸がいっぱいになった里菜。

「私…愛されていたんだ…。お母さんは、命と引き換えに私を産んでくれたんだ…。きっと、中学の時流産した子も本当は産まれてきたかったのかもしれない…。私を母親として選んで、来てくれていたのかもしれない…。ごめんね…ごめんね…」

 お腹を押さえて泣いている里菜…。

 顔色も変えずに平気で人を殺してしまう里菜とは違い、今は本当に素直に悔いているようだ。
 母の本当の気持ちに触れて押さえていた本当の気持ちが込みあがって来た里菜。

 愛香里も、病気で母を早くに亡くしている。
 母親は愛香里と同じ心臓病だったと聞いている。
 出産も一人が限界と言われていたが、2人目を授かり絶対に産むと言ったそうだ。
 その為に寿命が縮まったのではないかと、愛香里はずっと思っていた。
 しかし母は「貴女が産まれて来たくれたことが、私の喜びなの。貴女は何も悪くないわ、私が死ぬのは誰のせいでもない。私が決めた事なのよ」と言っていた。
 幸せだったと言い残して、姉のヒカルと愛香里に幸せになってねずっと見守っているよと、言い残して亡くなった…。

 亡くなる人は生きている人幸せを望んでいるのだろうと愛香里は思った。

 素直になった里菜はまるで別人のようで、これが本来の里菜の姿なのかもしれない…。



 取り調べも終わり、後は検察局へ任せる事になり愛香里は刑事を辞める決意をした。
 目的が姉と父の敵をとる事だった。
 これ以上刑事を続けていると、辛いと思ったのだ。


 
 愛香里が警察署から出てくると、外はすっかり夜になっていた。

 ここの所は取り調べが続いていて、警察署に泊まっていた愛香里。

 どうしよう…城原の家に戻るべきだろうか? それとも、今夜はどこかホテルに泊まって明日から住まいを探すべきだろうか?
 
 小さくため息をついて、愛香里は歩き出した。
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