あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「あの…」

 声がして、里菜はん? と振り向いた。

 里菜が振り向いた先には、ナヨっとした感じのヒカルがいた。

「あら、貴方は確か社長秘書の人? 」
「はい、城原です。すみません、様子を拝見しておりましたが。ここは、みなさんが休憩しておられる場所ですので。別の場所へいきませんか? 貴女も、その恰好では恥ずかしいと思いますので」

 チッと、舌打ちをした里菜。
 
「どうかしたのかい? 」

 奏弥がやって来た。

「社長! 」
 
 里菜は奏弥に駆け寄りギュッと腕にしがみついた。

「社長、聞いて下さい! あの人、私の事襲って来たのです」
「え? 」
「休憩に行く前に突然、通路の引きずり込まれて…。私、怖くて逃げだしてきたのですよ」

 奏弥は男性社員を見たが、男性社員は全く心当たりがないようで驚いて唖然としていた。

「千堂さん、話は別室で聞くから。ちょと来てもらえるかな? 」
「はい…」

 奏弥はそのまま里菜を連れて行った。

 残された男性社員は、どうしたら良いの変わらない顔をしていた。

「あの。大丈夫ですよ、心配しなくても」

 大丈夫というヒカルに、不安そうな目を向けた男性社員。

「このビルには、防犯カメラが付いています。たとえ隠れた通路に引きずりこまれたとしても、それまでの経緯が写されている筈です。カメラを見れば、すぐに判りますよ。自分を信じでいて下さいね」
「は、はい…」

「あの、みなさん。そろそろ休憩時間が終わりそうですよ、お早めに戻って下さいね」

 それだけ言うとヒカルは去って行った。

 騒めいていた社員達は、それぞれカフェテリアを出て行った。


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