あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「愛香里…」
 名前を呼ばれるとハッとしたヒカル。
「この名前が君には一番似合っているよ。お姉さんはお姉さん、愛香里は愛香里なんだから。もう、本当の自分に戻ってほしい。千堂里奈の容疑は固まったから、逮捕は時間の問題だよ」
「…逮捕されても、また精神異常で罪に問われないのでしょう? 」
「今回はそうはいかない。彼女が正常である証拠も、掴んでいるからね」

 フッと一息ついたヒカル。

「少し考えさせて下さい。…」
「ああ、分かったよ。ゆっくり休みなさい、元気になるまで私がついているから」
「それはいいです。お仕事も忙しいでしょうから」
「何を言い出すんだい? 娘が怪我をしているのに、仕事なんて優先する父親はいないよ。君のお父さんだって、そうだったじゃないか」

 それは…

(愛香里、もういい加減い自分の事を痛めつけるのは辞めなさい。…もういいだろ? )
 
 喧嘩をして傷ついて帰って来た愛香里に、父である颯太が優しく言った。

(愛香里は、今ここに存在しているだけでとても貴重なんだ)

 そう言われても愛香里は素直になれなかった。
 いつも病気ばかりで迷惑をかけている自分はすぐにでも、死んだ方がいいのだと思って愛香里はいつも喧嘩ばかりしていた。
 ヤンキーと呼ばれる連中とも仲が良く、表だっては出て来なくとも悪い連中とつるんで喧嘩ばかりして時折り怪我をして帰って来る愛香里に、颯太は叱る事はなくいつも労りの言葉だけをかけていた。

 怒りたいなら怒ればいい…どうせ、死ぬのだから…。
 そう思っていた愛香里。

 しかし凛太朗に恋をしてからは、喧嘩も止めて真面目になり姉のヒカルとても仲良くすごすようになった。

 ヒカルはいつもあまり食べない愛香里の代わりに、2人分以上食べていた。
 食べる事は楽しくて元気が出ると言っていたヒカル。

 周りからどんなにデブと言われても、全く気にしていなかったのは愛香里が元気になる為に自分が代わりに沢山食べてあげるのだと張り切っていたからだった。

 そんなヒカルも少し聖龍を意識し始めていた。
 そんな時から少しでも痩せようと、夜になると散歩を始めたヒカルだったが里菜に刺殺されてしまったのだ。

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