夜這いのくまさん
彼はわたしにいやらしい視線は向けないな、と思った。村の男はもう女が結婚という出荷されるまでに、検品するかのようにずっとこちらをねっとりとした視線で見つめるのだ。村の男ならばだれでも抱ける優遇の一日、そのシチュエーションが女を殺すとも知らずに。
彼は初めて会って、同じ人間として尊重してくれている気がする。
この沈黙でさえも少し心地よかった。吹き抜ける風も肌寒いが心地よい。

村の入口付近に着いたとき、いつもの帰る時間よりはやくてホッとした。そして誰ももう外に出ていないことを確認してより安心したのだった。
彼は先に降りて、両手を広げ降りるのを補助してくれた。

「本当にありがとう、次はお礼にサンドイッチでも作って持っていくわ」

「俺は卵で挟んだのが好きだ」

「覚えておくわ」

ふふ、と自然に笑みがこぼれた。
彼は手を振るなり、颯爽と来た道を翻した。
彼が小さくなっていなくなるまで、その姿を見つめていた。
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