夜這いのくまさん
キースはいつだって心地よい距離感で接してくれた。どうしようもなく優しく、少なからず好意は感じ取っていた。いつだって喜ばせようとしてくれていたのに。

アーレットは満足したのか、唇に糸を引きながら離した。
肩で息をしているシェリーに、見下したように見つめると死刑宣告のような言葉を投げ捨てた。

「俺の父親がシェリーを抱く、そしてそのあとはずっと俺の腕の中だ。シェリー」

家族丸ごと愛してあげる、そう言い残して彼はシェリーの髪の毛をひと房とりキスをした。


呆然と見送ったあと、のろのろと立ち上がった。この状態は誰かに見られたらまずい。
打ち付けた頭はズキズキと痛んだ。このまま死んでしまおうか。
でも、それならば。死ならもろとも。

一瞬、キースのことが頭に過った。大好きな私だけのくまさん。
もう会えないけれど、お元気でー---。
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