夜這いのくまさん

7

「シェリーとっても綺麗だわ」

当日、シャーレイなど街の女の子たちがみんな手伝ってくれた。
淑女といっていた意味が分かった。クラシカルなデザインで、月桂冠を頭に差し、ひとつにまとめている。ドレスは一切肌を見せないデザインで首筋のレースと、肩から指先まで彩るパールが入ったレースは品がある。現代風ではなく、古典を意識したものだった。
これをアーレットが送ったのではなかったら素直に喜べたのに。

紅はウェディングドレスを邪魔しない様にピンクのデザインだった。
だけれど、

「真っ赤にしてほしい」

「ええ?」それは違うんじゃないかと周りはざわついた。

「赤がいいの」

普遍的で素敵なドレスかもしれない。けれど、彼の意図するのは昔から変わらない普遍的な儀式なのだ。それをわからせるためのドレスなのだ。

シャーレイはシェリーの持っていた鞄から口紅を出した。そして筆にとって、上からなぞった。ぼやけた顔がくっきりと写し出される。シャーレイは笑った。
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