湖面に写る月の環

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彼はそれに優しく微笑み、その都度助け舟を出している。その様子に、彼女たちは既にコミュニケーションが十分に取れているのだと理解する。
「えっと……楽しんでる?」
「もちろんです。私の友人も、楽しませていただいていますし」
「……ああ、さっきの」
「ええ。親友とも言えるほどの人物ですので、ぜひ真偉さんにも覚えて頂きたいです」
「……わかった」
(おお……!)
たどたどしくもこくりと頷いたひがしに、僕は目を瞠る。知り合いの効果はどうやら絶大らしい。……大概わかりやすい人だ。

「それで、脅迫状の件はどうなっているんですか?」
ふと聞こえた問いかけに、僕は慌てて自分の手元を見る。そこには捉えていたはずの自由人がおらず、代わりに岡名の目の前で背筋を伸ばして立っていた。
「あっ、お前いつの間に……!」
「先輩がぼーっとしてるのが悪いっす!」
べっと舌を出す彼に、僕は眉間のしわを一気に深めた。
(油断も隙もありゃしない……!)
地団太を踏みたい気分を必死に抑え込む。しかし、今から彼を捕えるのはかなり難しいだろう。距離もあるし、何より彼がいるのはひがしの目の前。大きな音を立てて警戒されても困るし、だからと言って放置することも出来ない。……そもそも、変な事を話さなければ捉える必要性はないのだが。
(いざとなったら岡名さんに助けてもらおう)
僕はそう決心すると、目の前の状況を見守る事にした。探偵少年の言葉を受けたひがしが、岡名に向き直る。不思議そうな顔をしているところを見ると、もしかしたら脅迫状の存在を知らなかったのかもしれない。
「……脅迫状って?」
「あ、いやっ」
「……もしかして、また例の物が届いたの?」
(――やっぱり)
僕は自分の考察が当たっていた事に。岡名は隠していたことがバレたのが痛かったのか、顔を歪め、息を詰まらせている。少し可哀想な気もするが、今更止めても無意味だろう。正直に言えば、巻き込まれたくない。
「ふぅん。……ねえ、貴方」
「何でしょう?」
「脅迫状の内容、教えて頂戴」
彼女の言葉に、探偵少年が目を見開く。よもやそんなことを言われるだなんて思ってもいなかったのだろう。探偵少年は自身の持っているメモと、くしゃくしゃになってしまった脅迫状を見下げ、岡名を見つめ返した。岡名はもう誤魔化せないと思ったのか、苦い顔で笑みを浮かべるとコクリと頷く。探偵少年は、彼を見つめ返すと僅かに頷き、小さくそれを読み上げた。
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