湖面に写る月の環

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「そんな怖い顔しないでくれよ」
「す、すまない」
「でも、気持ちはわかる。だからこそ、俺はこの件について本格的に調べようと思っているんだ」
「本格的にって……」
どうやって、と言いかけて、僕は口を噤んだ。……きっと、彼に聞いても答えてはくれないのだろう。どれだけ一緒にいたと思うのか。
(それでもわざわざ言ってきたってことは……僕にも何か関係があるのかもしれない)
「君には今以上に迷惑をかけることになると思うけど……頼めるだろうか」
珍しくしおらしさ全開で眉を下げる彼に、僕はいやいやと首を振る。
「迷惑だなんて。例の探偵少年に比べたらお前の頼み事なんて小さなものだよ。どんと僕に任せな!」
「ははっ、頼もしいな。──その探偵くんと、しばらく行動を共にして欲しいってお願いなんだけれど」
「……は!?」
サラッと言われた“頼み事”に、僕は聞き間違えたんじゃないかと思い、ちゅう秋を見る。しかし、いつも通りの掴めない笑顔でこちらを見つめる彼に、聞き間違えじゃないと思い知る。
「な、なんで!?」
「彼、探偵らしく好奇心旺盛だろう? 変なことに巻き込まれないように見張ってて欲しいんだ」
「むしろあいつ自身がトラブルの種なんだが!?」
巻き込まれる? 見張ってて? ──何を言っているんだ、彼は。
(あいつはいつも渦中のど真ん中にいるような存在なんだぞ!?)
保護するべきは彼ではなく周りで、少年の毒牙がかからないようにする方が優先だろう。
「はははっ。よく分かり合えているようで何よりだよ。友人として、少し嫉妬してしまいそうだ」
「は、はあっ!?」
からかうような彼の言葉に、僕は堪らず素っ頓狂な声を上げてしまう。どこをどう見て勘違いしたのか。──というかそもそも。
「仲良くないって言ってるだろ!」
「そんなに恥ずかしがらないでいいんだよ」
「恥ずかしがってなんかいないっつーの!」
バンバンッと机を容赦なく殴りつけながら、僕はちゅう秋に抗議する。しかし、彼は取り合う気は毛頭ないようで。けらけらと笑っては謝る素振りすら見せない。
(こいつ……!)
全然僕の話を聞いていないじゃないか!
「まあまあ。それよりも、私のお願いは聞いてくれないのかい?」
「お願いって言うより、もはや強制だろ」
「ははっ、そんなことはないさ」
「でも、やってくれるんだろう?」と笑う彼に、僕は気まずさに視線を逸らした。……外れてないから、余計に彼の顔が見られない。
(……断れるわけがないだろ)
──友人の、しかもちゅう秋の頼みなら尚更。
「……できるだけだからな」
「もちろん」
「見られなくても文句言うなよ」
「わかっているよ」
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