湖面に写る月の環

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岡名はそんな彼女を見て、心配そうに眉を下げる。──そんな空気を切り裂いたのは、探偵少年の声だった。
「なあ。話ってもしかして、ここにいないメンバーのことか?」
「「「!!」」」
四人の目が見開かれる。その反応が、答えだった。
(いないひと、って……)
僕は言葉に瞬時に周囲を見回した。……確かに。にし京の姿がない。全然気が付かなかった。
(でも、それってかなりデリケートな話なんじゃないのか……?)
そんなに直球で聞くのは、彼女たちの心に容赦なく踏み込むのと同義なはず。つまり、彼女たちにとってかなりの負担を強いている状況になっているのではないだろうか。――それは駄目だ。
僕は咄嗟に止めようと足を踏み出す。だが、それはちゅう秋の手によって止められてしまった。彼を見上げれば、「大丈夫」と微笑まれる。
(何が大丈夫なんだ)
あの探偵少年だぞ。何をしでかすか、わかったもんじゃない。僕はそれを目で訴えるが、ちゅう秋はそれを聞く気はなかった。自身の意見が通せないことを知った僕は、口を噤む他なかった。
「……どうしてわかるんだい、探偵くん」
「んなの見ればわかるだろ。つーか、他のメンバーが全員いるのに、“にし”だけいないのはおかしいだろ」
淡々と。まるで“わかって当然”とでもいうように告げる彼に、それを聞いていた岡名は驚いた後苦笑いを浮かべた。しかしそれはいつもよりもうんと歪で、どちらかと言えば『笑っている』というより『泣きそうな』顔をしている。後ろにいるみやこのメンバーが口元に手を当て、俯く。聞こえる声は、嗚咽だった。
「……彼女は、来られなくなった」
「えっ」
「というより……朝紀はもうここには来ない」
岡名の言葉に、僕は目を見開く。予想外の言葉に、心底驚いた。
「来られないって……来ないってどういうことですか」
「……」
「岡名さん?」
「……私から話すわ」
かつりと踵を鳴らし一歩前へと出たのは、ひがし京だった。透き通るような白い髪を揺らした彼女の顔色は、いつもより悪く、青白い。何かがあったと理解するには、十分で。――しかし、自分が話さなければという信念が僅かに見え隠れしている。彼女は手元を撫でるように交差させると、深呼吸するように小さく息を吐く。濃いクマを目の下に携えたひがし京は、震える声で説明する。
「……昨日ね、変な夢を見たの」
「変な夢?」
小さく頷くひがし京。続く彼女の静かな言葉に、僕たちは聞き入った。
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